平成16年度行政コスト計算書
1.行政コスト計算書作成の背景と作成基準
行政コスト計算書作成の背景
地方公共団体の行政活動は、将来の世代も利用できる資産の形成だけでなく、人的サービスや給付サービスなど、資産形成につながらない当該年度の行政サー ビスについても大きな比重を占めています。このため、資産形成につながらない当該年度の行政サービスのために、地方公共団体がどのような活動をしたのか について、把握するものとして行政コスト計算書があります。
コストを把握するための方法には、公会計における決算書や民間企業で採用されている損益計算書がありますが、これらと行政コスト計算書では、次の点が違います。
(1)公会計との違い
現在の地方公共団体で採用している公会計は、現金の支出をベースとしてコストを把握しています。しかし、地方公共団体の活動の実態像を把握するために は、現金の支出だけでは捉えきれるものではないことから、行政コスト計算書では、当該年度の地方公共団体の活動に対応させるべき減価償却費や退職給与引当 金などの非現金支出を含めています。
(2)損益計算書との違い
行政コスト計算書は、民間企業の損益計算書に相当するものですが、利益の追求を目的としている民間企業と異なり、地方公共団体は、住民福祉の向上を図る ことを目的としています。このため、損益計算書のように売上原価を費用として算出し、それを損益計算書の基礎とするものではなく、どのような行政サービス にどれだけのコストがかかっているかなど、行政コストの内容自体の分析を行うことを目的としています。
行政コスト計算書作成の前提基準
平成13年3月に総務省から発表された「地方公共団体の総合的な財政分析に関する調査研究会報告書」に示された基準(総務省方式)に準拠して作成しました。
(1)対象会計
普通会計を対象。
(2)対象期間
平成16年4月1日~平成17年3月31日
(3)基礎データ
平成16年度決算統計
(4)発生主義による調整(主なもの)
ア.人件費、退職給与引当金繰入額 |
参考)行政コスト計算書の解説
行政コスト
1.人にかかるコスト
(1)人件費
決算統計の人件費から当該年度の退職手当支払額を除いた額を計上します。
(2)退職給与引当金繰入額
当該年度に引当金として新たに繰り入れられた分に相当する額を計上します。
2.物にかかるコスト
(1)物件費:備品や消耗品の購入、光熱水費、業務委託などに要する経費です。
(2)維持補修費:建物など施設の維持修繕に要する経費です。
(3)減価償却費:有形固定資産の減価償却相当額を計上します。
3.移転支出的なコスト
(1)扶助費:保育所などの運営、医療費の援助や各種手当の支給などに要する経費です。
(2)補助費等:公営企業会計や各種団体への補助金などです。
(3)繰出金:特別会計への繰出金です。
(4)普通建設事業費:国・県直轄事業負担金や他団体への補助金のように、他団体での資産形成に支出した負担金や補助金などです。(町の資産形成につながるものは、バランスシートに計上)
4.その他のコスト
(1)災害復旧事業費:災害復旧事業に要した経費です。
(2)公債費:町債の利子支払額です。
(3)不納欠損額:町税や使用料などの未収金で不納欠損処理を行った額です。
収入項目
1.使用料・手数料
町営住宅使用料、住民票等交付手数料等の調定額です。
2.分担金・負担金・寄付金
保育所保育料、寄付金等の調定額です。
3.諸収入
受託事業、貸付金収入(元金返済分を除く)の調定額です。
4.その他の収入
財産運用収入や財産売払収入などの調定額です。
5.国庫(県)支出金
国庫補助金や県補助金などの調定額です。
2.苅田町の行政コスト計算書
行政コスト
項目 | 総額(千円) | (構成比率)% | |
1 | (1)人件費 | 2,215,530 | 19.57 |
(2)退職給与引当金繰入額 | 340,569 | 3.01 | |
小計(人にかかるコスト) | 2,556,099 | 22.58 | |
2 | (1)物件費 | 2,452,176 | 21.66 |
(2)維持補修費 | 54,476 | 0.48 | |
(3)減価償却費 | 1,746,578 | 15.43 | |
小計(物にかかるコスト) | 4,253,230 | 37.57 | |
3 | (1)扶助費 | 1,145,640 | 10.12 |
(2)補助費等 | 718,742 | 6.35 | |
(3)繰出金 | 1,602,710 | 14.16 | |
(4)普通建設事業費 | 668,946 | 5.91 | |
小計(移転支出的なコスト) | 4,136,038 | 36.54 | |
4 | (1)災害復旧事業費 | 47,790 | 0.42 |
(2)公債費(利子分のみ) | 274,238 | 2.43 | |
不納欠損額 | 52,082 | 0.46 | |
小計(その他コスト) | 374,110 | 3.31 | |
行政コスト:A | 11,319,477 | 100.00 |
収入項目
項目 | 金額 |
使用料・手数料 | 137,733 |
分担金・負担金・寄付金 | 281,483 |
国庫支出金 | 693,026 |
県支出金 | 490,596 |
財産収入 | 126,292 |
諸収入 | 23,279 |
特定財源計:B | 1,752,409 |
B÷A(%) | 15.48 |
一般財源:C | 10,061,284 |
C÷A(%) | 88.88 |
収入(B+C):E | 11,813,693 |
正味資産国(県)支出金償却額:F | 347,541 |
差引(E-A+F):G | 841,757 |
3.行政コスト計算書経年比較
科目名 | 16年度 | 15年度 | 差引 | 主な増減理由 |
人件費 | 2,215,530 | 2,210,357 | 5,173 | |
退職給与引当金繰入額 | 340,569 | 53,875 | 286,694 | |
小計(人にかかるコスト) | 2,556,099 | 2,264,232 | 291,867 | |
物件費 | 2,452,176 | 2,455,915 | ▲3,739 | |
維持補修費 | 54,476 | 47,824 | 6,652 | |
減価償却費 | 1,746,578 | 1,830,614 | ▲84,036 | |
小計(物にかかるコスト) | 4,253,230 | 4,334,353 | ▲81,123 | |
扶助費 | 1,145,640 | 1,043,522 | 102,118 | 社会福祉、児童福祉関係の扶助費の増 |
補助費 | 718,742 | 640,046 | 78,696 | |
繰出金 | 1,602,710 | 1,205,875 | 396,835 | 下水道事業、臨空産業団地事業への繰出 |
普通建設事業費 | 668,946 | 425,354 | 243,592 | 新北九州空港整備、県営事業に伴う負担金 |
小計(移転支出的なコスト) | 4,136,038 | 3,314,797 | 821,241 | |
災害復旧事業費 | 47,790 | 12,505 | 35,285 | 台風による河川復旧工事の為 |
公債費 | 274,238 | 298,375 | ▲24,137 | |
不納欠損額 | 52,082 | 37,038 | 15,044 | |
小計(その他のコスト) | 374,110 | 347,918 | 26,192 | |
行政コストA | 11,319,477 | 10,261,300 | 1,058,177 | |
苅田町住民台帳人口(費用/人) | 34,186 | 34,312 | ▲126 | |
収入項目 | ||||
使用料・手数料 | 137,733 | 142,349 | ▲4,616 | |
分担金・負担金・寄付金 | 281,483 | 278,345 | 3,138 | |
国庫支出金 | 693,026 | 604,385 | 88,641 | |
県支出金 | 490,596 | 505,749 | ▲15,153 | |
諸収入 | 126,292 | 81,766 | 44,526 | |
財産収入 | 23,279 | 59,573 | ▲36,294 | |
繰越金 | 0 | 0 | 0 | |
特定財源B | 1,752,409 | 1,672,167 | 80,242 | |
B/A | 15 | 16 | ▲1 | |
一般財源C | 10,061,284 | 8,160,867 | 1,900,417 | |
C/A | 89 | 80 | 9 | |
収入(B+C)E | 11,813,693 | 9,833,034 | 1,980,659 | |
正味資産(国・県)支出金償却額F | 347,541 | 337,270 | 10,271 | |
差引(E-A+F)G | 841,757 | ▲ 90,996 | 932,753 |
「物にかかるコスト」は、その大半を占める物件費がやや減少していることや、減価償却費も減少しており、減少傾向にあります。
しかし、職員定数がほぼ横ばいであるため、退職給与引当金繰入額が増加し、その結果「人にかかるコスト」は増加しています。また、医療費等の扶助費が増加 しており、下水道事業、臨空産業団地造成事業への繰出や新北九州空港関連の負担金増により普通建設事業費が増加している為、結果として、「移転支出的なコ スト」も増加しており、全体的に増加傾向にあります。
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